最初、この公演が発表されたときに頭によぎったのは「演者に演者自身を演じさせて観客の心情を無理やり動かそうとしてる!嫌な大人の作る作品だ!」でした。すみませんでした。
だって、売れないアイドル活動をしていた4人、うち1人はいつのまにかトップスターになっていて、表舞台に残らなかった、残れなかった残りの3人のインタビューから始まる舞台なんてそうだとしか思えないでしょう。
みたいなことを思っていて、ついでに初日直前にタイプロに出演者の2名が参加しますとアナウンスもあって、なんだか人の人生をエンタメ化するのって嫌ね〜とか思いながら観たら、予想が全く外れていたしなんならサスペンスホラーだった。
誰かを応援することは、一種の宗教みたいなものだと思うことは多々ある。
応援する相手を輝かせたいがために、いくつも同じCDやグッズを買ったり、何度も同じ公演に足を運んだり、そのために自分の時間やお金や感情をすべて捧げてしまったり。そんな精神状態になるのは「観ている側」だけの話かと思いきや、本当にトップスターになるような人間はファンだけではなくて、近しい人間すら虜にしていく。ありそうな話だよなあと思う。
最後の「ずっと応援してる」のリフレイン、前向きな希望のメッセージのはずなのに、呪いの言葉のようだった。どちらが呪いをかけているのか、かけられているのか、分からない魔法のような呪い。
この舞台に唯一登場しない葉山リクは、周りの人間に呪いをかけたし、周りの人間も葉山リクに呪いをかけたのかもしれない。
葉山リクの元アイドル仲間3人のエピソードの大半が嘘、となるとなるほどな上手いな〜と思うのが「結婚して子どもまでいる妻が葉山リクのファンで、自分に近づいたのも葉山リクと繋がりたかったからで、自分には愛情がなかった」というものだった。これ観ながらきっかけとしてはよくありそうな話だよなー(誰かの実話なのでは)と思いつつも、結婚して子どもまでいるならもうそれは妻も君を愛してると思うのだが!?勘違いも甚だしいよそりゃ妻怒るよ…しかしめちゃくちゃ男性目線の意見だなよくこんなエピソードが通ったな、などと思っていたのだが創作なんだものね。絶妙な自己中具合、創作ならすべて納得。
他エピソードも、思えばいやいや勘違いがすぎるのだが!?みたいなものなので、このあたりはワザと現実にありそうだけどあなたも現実見てないですよね、まあどれもこれも創作だからね、みたいなものを入れてきたのかもしれない。
全体的に世にも奇妙な物語のようなうっすら気味が悪い世界観の中で、合間に挟まれるアイドル時代のエピソードが明るかったのがバランス良くて楽しい観劇だった。このアイドル時代パートを観て、この舞台があと10年早くやっていたら「もし出演者がアイドルだったら」の世界線を夢見てしまってただろうなと思う。現在進行形で夢を見た人もいるかもしれないけれど。
今タイプロでめちゃくちゃ人気らしい寺西くん、この舞台でもまー良いお芝居をしていて、なんというかなんでアイドルになりたいの、このまま役者で爆売れしてくれようと思ってしまった。